コンサートには楽屋花というものが届く。
会館の入口に並ぶ大きな花はスタンドにのせて飾るから通称「スタンド花」という。
楽屋花は、それと比べて小ぶりでカゴなどにアレンジされている。
花文字でコンサート名が書かれたもの。
ケーキのようにデザインされたもの。
珍しい花で彩られたもの。
ギターのボディをくりぬいて薔薇を飾りつけたもの。
楽屋付近は有名花店の競演のようだ。
フラワーキャンドルの為に、この楽屋花を残してくださるアーティストが多い。
「そうなんだ、じゃこれも届けてください」
手にしていた花束も渡してくださったアーティストがいた。
楽屋花を回収していた私たちのことをスタッフから聞いたようだった。
「1つでも多い方がいいでしょ」と笑顔で言った。
アーティストイメージにあったブラックローズの花束。
楽屋から出てくるのを待つファンには視線を向けることなく横付けされた車に乗った。
アーティストイメージ・・・。
7月、8月、そして9月。
武道館もAXもZeppもたくさんの花が並んでいたが
フラワーキャンドルの花とはならなかった。
施設へ寄贈できる寿命が残っていないのだ。
10本のスタンド花がありながら1つも届けられない時もある。
5年間の活動を通じて初めてのことだ。
今年の夏の暑さは花の寿命を奪っていた。
HPには寄贈できる花があったところだけを掲載している。
武道館へ行っても寄贈できる花がゼロであれば掲載しない。
何回回収に行ったかが目的ではなく、どれだけ施設へ届けられるかが大事だからだ。
今年の夏はゴミを意識させられた年となった。
大量の花を処分した。
残念な気持ちが渦巻く毎日が続いたが、1ついいこともあった。
軽度障害者の職業施設である授産施設と共同で試していることがある。
1つは、首を下げた花の再利用。ドライフラワーやポプリの作成。
1つは、生ゴミの再利用。肥料などへの加工。
授産施設で作業する人々の新たな仕事が1つ生まれれば、この夏も悪くなかったと
思えるかもしれない。
| ↑ ページ先頭に戻る |